2008年2月2日土曜日

理系白書 この国を静かに支える人たち


あれは私が高校生の頃だったか、中学生の頃だったか。行きつけの散髪屋で髪の毛を切ってもらっている時に、親父さんと話をしたことを思い出す。
「○○くんは将来なにになりたいの?」「もっとスゴい半導体を創りたい」というような、いわゆる理系の進路を目指したいと答えると、「理系か、スゴいねぇ」と言われた。そのときの私は生意気盛りだったのだろう、「スゴくなんかないよ。だって、今の日本は文系が強いじゃないか」と口答えをした。散髪屋の親父さんは「そうかなぁ。やっぱり理系はスゴいと思うよ」というが、どうしてもそうだとは思えなかった。おもわず、「だって、日本で一番えらい人は総理大臣で、文系じゃないか」といってしまった。

今考えると、別に日本で一番えらい人は総理大臣ではない。しかし、おそらく当時の私にとって、総理大臣というのは立身出世や世の中の評価の象徴だったのだろう。そしてそのころ既に私は「日本で理系は冷遇されている」ということに薄々気がついていたのだろう。

その後、毎日新聞で「理系白書」の連載が始まった。本書はその1年ちょっとの記事を再構成したものである。内容は理系の不遇な現状に始まり、理系の目指す将来で終わる。

当時、「理系は冷遇されている」と薄々感づいていた現実は、大学院に進学した今も感じる。実際に理系人となってみて、この本に書かれている内容は事実だと強く感じる。だからこそ、私のまわりにいる友人たちの内に、理系の不遇を感じいわゆる理系就職を選ばないで文系就職を行っている人がいるし、就職活動中もそのような人をたくさん見た。もちろん、このような人は少数派ではあるが、バブル期以前よりは増えているのではないだろうか?

だから、不遇な状態の改善はいらない。この状態を赤裸々に知らせることが必要なだけだ。そうすれば、理系を目指そうとする人は減り、企業、社会、国家がもつ「技術立国日本」という財産は失われるか、これを避けるために自動的に地位が向上するだろうから。

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